プーチンが足先でパイプラインを押さえていてもいいのか? の続き・・

 もっと重要なことに、欧州委員会は供給源の多角化の必要性を強調している。1つの重要な新ルートはナブコ・パイプラインで、それはバルカン半島及びトルコ経由で、欧州を中東、カフカス及び中央アジアのガス田と結ぶことを狙っている。このパイプラインは完全にロシアを迂回しており、実際にどれだけの天然ガスが運ばれるかに関係なく、欧州の交渉力を飛躍的に高める。同じように欧州は、液化天然ガス(LNG)輸入のための港湾施設を増やす必要があるだろう。

 この目標を達成する最善の道は、競争があり自由化された市場を持つことだ。この点で最先端を行く英国が、最も多様な供給源と、最も充実したインフラ(新LNGターミナルを含む)、そして過去10年間にわたって最低価格を維持しているのは偶然ではない。

 とはいえ、各国のエネルギーのチャンピオンを敵に回すのは大変なことだ。それらはEUの大国で最も強力な権益の一部を代表し、政界上層部の人々に名誉職その他の便益をたっぷり提供している。ドイツ前首相が退任直後にロシア−ドイツ・エネルギー会社の高給の会長職に指名されたことは、最近まで空想上のスキャンダルかに見えたかもしれないが、本当に実現してしまった。ゲアハルト・シュレーダーは今、ロシアとドイツを結ぶ新しい海底ガスパイプラインを建設中の会社を率いているのだ。

 欧州委員会は、ナショナル・チャンピオンの解体を促している。もっとも、末端配電線網の経営を切り離して第三者に移せば、単体企業として残り得るという逃げ道を残した。それでは巨大企業が送電系統を握ったままになるため、つまらない次善の策のように見えるが、無よりはましだ。重要な試金石となるのは、これら「独自に運営される」新部門が、相互接続のパイプライン建設を進めるかどうかである。

 それは、不運な消費者に供給を確保する手助けになるだけではない。大手公益企業が互いに競争する用意があることを示す徴候でもある。今のところ、彼らがお互いの孤島に参入することには強い阻害要因がある。侵略者は、既存のライバルの送電系統を使うために行列しなければならないからだ。

 EU閣僚が3月に委員会提案を検討する時、彼らは、エネルギーは実際に重要であり、各国政府はエネルギー問題を特別扱いしなければならないことを思い起こすべきだろう。だが、ほかと違った扱いをすべき点は、国家権力を偽の安全保障の名の下に競争を窒息させるためではなく、各国のチャンピオンと対峙するために使うべきだということ。そうでなければ、プーチン氏を信頼するしかない。


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